ヒメゴト

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はじめに、あるいは僕の話。

 それほど長い期間ではないけれど、僕が物語というものを書き始めてから気づいたことが一つだけある。それは自分の見聞きしたことや自分で考えたことしか 書けないということ、つまり始まりは全て自分だということだ。だから、僕の小説は自分だ。これまで綴ってきた物語の主人公とか、出来事とか、そういうもの も全て自分。当然の事ながら、これから綴る物語もそれと同じで主人公も出来事も、自分が体験したこととか、友達に聞いた話とかそういったものをごちゃ混ぜ にして煮詰めただけ。むしろ、これからの物語は、これまでの物語以上に僕のすべてが詰め込まれていると思う。それは僕にとって初めてのことで、これがうま くいくかはわからない。ひょっとすると陳腐なものになるかもしれないし、素晴らしい物になるかもわからない。だけど、これは今やらなくてはいけないこと だ。誰になんと思われようとも構わない。
 さて、つい何行か前で、物語は自分だ、といったけれども、実はそれは正確ではない。正しく言うとすれば、実際の自分ではない、ただし自分の中には確かに 存在している、といえばいいのだろう。物語はあくまで物語だ。だから、もちろん実際の結果とは違う結果になることもある。でもそれは、実際の僕ではなく、 こうであればよかったと思う僕であったり、こうでなくてよかったと思う僕であったりする、というだけだ。だから、本当のことではないけれども、自分のなか に確かに考えていることだ、ということだ。
 なんというか、これ以上書くと、何を言っているか、きっと自分でもわからなくなるし、これから先を読んでいく人達にも失礼にあたると思う。
 だから単純に言おう。
 これから綴る物語は紛れも無い事実だ。だけどそれと同時に虚構でもあり、願望でもある。だから、ここから先に書いてあることが僕の本当の気持ちなのか、 それとも違うのか。それは多分誰にもわからない、わかってほしくない。だけど、とりあえず、ここから先の物語を読んでほしい。つまらないかもしれない、陳 腐かもしれない。でもこれが僕なのだ。どうあろうと。どうあがこうとも。

 この物語が、少しでも誰かの救いや慰めになることを祈って。
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