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● 家電のキモチ  ●

家電のキモチ

その一

なぁ。機嫌を直してくれよ……
俺、お前がちゃんとしてくれないと生きていけないんだって。
お前が色々話してくれないと世の中のことわかんないしさ……
頼むよ……新聞も購読してないんだからさ…
ここまで言ってもわかってくれないのか?
あー、わかった。
叩いてやる。
いいか、お前が悪いんだからな。
俺がここまで謝ってるのに。
叩くからな。
それ!


………くそ、まだわかんないのか。
もう一回だ。
せい!



………ふぅ、やっとわかってくれたのか。
しかし最近特に言うことを聞かなくなったな……
新しいのに買い換えるか。
テレビ。
あっ!また映らなくなったよ……



その二

今まで私と過ごしてくれてありがとう……
私はもう駄目だわ……
思えばあなたとはあのデパートで初めて会ったんだったね。
隅の方で縮こまっていた私をあなたは優しく手にとってくれた……
それからは本当に楽しかった。
あなたが食事をする姿やテレビを見てる姿。
あなたの色々な姿が見られて。
でも、寝顔だけは見られなくて残念だったな……
ううん、もうそんなこと言っていてもしょうがないよね。
私はあなたと一緒だから輝いていけたし、あなたを輝かせることをできた。
でももうお別れだね。
本当にありがとう。
楽しかったよ。
じゃあね……



「あっちゃー……
遂に電球切れちまったか……」



その三

もう何も言わないで。
私はあなたに何を言われても首は縦に振れないの。
どんなに甘い言葉を囁かれても。
どんなに私にとって嬉しい言葉を言われても。
どれだけ大きな声で言われても。
私はあなたの想いに答えることはできないの。
ねぇ……
もう止めてよ……
本当に駄目なの。
これ以上言われたら、もう何も出来ない。
首を動かさないで沈黙していることしか。
ねぇ……



「あ〜〜〜〜。
扇風機じゃそろそろキツいかな。
暑い……」



その四

お前さぁ……
ちょっと冷た過ぎやしないか?
一応一緒に暮らしてるんだから、もう少し……ほら。あるだろ?
いや、勿論俺はお前のそういう冷たいところが気に入ったんだけどさ。
クーデレとか期待したわけじゃなくて。
寧ろデレられると困るんだけどな。
って話がそれちゃったな。
とにかくもう少しなんとかしてくれな。
飲み物が冷えすぎて腹が痛くなるんだよ。



……こんなところに温度調節つまみあったんだな。
この冷蔵庫。



その五

♪〜(間奏25秒)

※自由なリズム、音程で歌ってください。



男 君と僕は無敵のコンビ
女 どんなものでもイチコロよ
男 どんなものでも僕達の
女 大きな口にいれてしまえば
両方 瞬殺なのさ
女 あなたが濡らして
男 お前が乾かす
女 そうね
男 そうさ
両方 無敵のコンビ
男 洗濯機と
女 乾燥機



♪〜(間奏18秒)

タイトル…洗濯機と乾燥機

作詞…やしろ。

作曲…これを見てわざわざ歌ってくれたあなた。



その六

ハハハハハ!
この私の力に跪くがいい!
私に楯突いたものは地獄の業火に灼かれるのだ!
お前がどれだけ冷たかろうと、私の前では関係ない!
お前の中に潜む水分を振動させ、体の芯から灼いてやる!



……グワァ!
な……なんだと!
私の攻撃がきかない!?
くっ……!いったいお前は何なんだ!
や……やめろー!

ボンッ

「あー!金属ボウル間違えてレンジに入れちまった!
ヤバッ!なんか燃えてる!」



その七

「やかん、火加減はどうだ?」
「お気遣いありがとうございます。旦那。
いい感じです。」
「そうけぇ。それならいいんだ。」
「……旦那も大変ですな。殆ど一日中働いてるでしょう?」
「ははは……。
まぁなぁ。でもそれが俺の仕事さ。俺が止まっちまったら、やかんも困るだろう
?」
「えぇ、確かにそうですが……
でも本当に旦那はそれでいいんですか?
こんな所でくすぶる人でもないでしょう?」
「そういうな。
俺はなんだかんだ言ってここが気に入ってんだよ。
ほら、もう風呂からあがってくるぜ。」



「あー、いいお湯だった!
ストーブつけといたから寒くないし、あたしって幸せ者だな♪」
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